@ Cinema Port

こころにひびく映画紹介

映画『 フィッシャーキング』(永遠の謎 恋する気持ち)

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Arika的お勧め度:★★★★★95点

『フィッシャーキング』という映画がある。私の記憶が正しければ『未来世紀ブラジル』とか『バロン』を撮った鬼才テリー・ギリアムの当時の最高傑作ではないかと思える作品です。

当時、私は映画が終わった後も、ほとんど鳴咽状態で席を立てなかった記憶がある。本当、人生何が起こるかわからない。ジェフ・ブリッジズはニューヨークの深夜放送界に君臨している人気ディスコジョッキーなんだけど、ある日、一言いったために殺人事件を起こしてしまう。で、「3年経ちました」って、非常に速い展開で(笑)。落ちぶれてアル中になったジェフが殺されそうになったときに、どこからともなくロビンフッドみたいな格好をした男が現れて助けてくれる。これがロビン・ウイリアムズで、ホームレスの親分みたいな男なんだけど、精神に異常をきたしてる。

私なんか、町歩いてるときに、ブツブツブツ独り言を言ってるような男が隣に来たら、どうしたってその人から離れようとするよね、するでしょ???  でもね、この映画はそうじゃないんだよね。真っ向からその中に入って行こうとする鬼才テリー監督のうまさっていうか、そのブツブツ言っている人の心の中に入って行って、その心が何を見てるかを、私達に見せてくれるセンスの良さがあるんだ。

この映画には、二つの見方がある。

一つ目はは、自分の中の『現代病を判断するカルテ』というか、この映画を観て納得出来たならば、自分はどっかおかしいなと思っている人でも、ちっともおかしくないんだよって。まったくわからないっていう人の方が病気を恐れているんだよって、思う…。その人達に見えているものっていうのは、もしかしたら、非常に根源的で純粋なのかもしれない、その純粋なものに対して私達は非常に恐れを抱いているんじゃないか、という事に気づかせてくれるのだ。

二つ目は、『美しく感動的な愛の告白』。恐ろしい体験で精神の大きな痛手を負って、ホームレスに転落した元ヤッピーのパリーが、小さな出版社に勤める何の取柄もないOLリディアに恋をする。毎日毎日、道端から彼女のことを見守って、彼女がドジするたびに一緒に心を痛めて、その彼が、やっと彼女とデートした夜、恋愛に壊疑的になってしまっている彼女に、愛の告白をする。その愛の告白が、私をボロボロに泣かせたのだ。あれほどに美しく感動的な愛の告白を、私は他のどんな映画や本でもお目にかかったことがない。

パリーとリディアの恋物語がこの映画の本筋ではないのだけれど、誰かを愛するという気持ちとはこういうことだというのを教えてくれます。『人は決して、綺麗だからカッコいいからというだけで、その人を愛するのではない。その人の痛みや孤独やみっともないところをこそ、愛することもあるのだ!!!』という、その真実を教えてくれます。


人間の心の中に真っ向から入っていく『フィッシャーキング』だけど、全然難しくないの! 不思議なファンタジーで、すごく楽しめる映画! 役者が全員うまい! こんなにいいジェフ・ブリッジズは初めてだと思うし、男2人の恋人役の女優たちもいいし、変な役者ばっかなんだけど(笑)、あきれるくらいうまい! 


誰 か と 誰 か が 強 く 惹 か れ 合 う 理 由 は、 

当 人 同 士 に し か わ か ら な い 。

い え 、 ひ ょ っ し た ら 当 人 同 士 に も わ か ら な い か も … 。

考 え て も 決 し て わ か る こ と の な い 、 

永 遠 の 謎 の よ う な も の が 、 恋 す る 気 持 ち の 真 実 か も … 。

 

 文/Arika

挿絵/雑画家*Arika