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@ Cinema Port

こころにひびく映画紹介

邦画『まぁだだよ』

■師弟愛を描いた30作目の黒澤作品

黒澤明監督が敬愛する随筆家・内田百ケン(松村達雄)の後半生を、その教え子たち(井川比佐志所ジョージなど)が主宰する「まあだかい」を主軸にしながら描き出していくヒューマン映画。この作品は黒澤明監督生活50周年、30作目の作品。内田百聞と、その門下生たちとの心温まる交流を描き、現代では死語になりつつある”師弟愛”に目を向け、その美しさと尊さなどが、黒澤作品独自の極彩色の映像美でつづられていくが、そこには黒澤監督自身が歩んできた幼い日への憧憬が多分に込められているとみていいだろう。まるで落語のようなおかしな話、しんみりする話が連続する。黒澤明監督の映画の中で、これほど笑い、そして歌の場面が多い映画は他にない。特に「あおげば尊し」が心に残る。そういう特徴はあるが、室内のシーンはこう撮影するのだ、という黒澤流撮影の技法はふんだんに披露される。まるで、監督自身が後進に範を示すように。室内の場面だけでなく、日本の四季を捉えた映像や、香川京子の仕草などは、古き良き日本を映像化しておきたいという監督の意図を反映してるのだろう。要所でヴィヴァルディの曲を効果的に使う音楽センスもさすが。そして、最後、先生は子供に戻って隠れん坊をする夢を見、その子供が見る雲の浮かんだ空が、金色、緑色、そして赤紫のような色に変化して映画は終わるのですが、この色彩感覚には舌を巻く。「夢」以来の作品のエッセンスを煎じ詰めたような幻想的なシーン。監督はこのような夢を見ながら大往生を遂げたのではないだろうか。黒澤明監督映画の歴史のラストを飾る名場面である。そして黒澤明監督への感謝の気持ちで一杯になる映画である。そして黒澤モノクロ映画時代を支えた名女優・香川京子が主人公の愛妻として久々に黒澤映画出演を果たしたことも、ファンにはうれしい話題でした。

 

 

まあだだよ デラックス版 [DVD]

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出演: 松村達雄, 所ジョージ, 香川京子, 井川比佐志, 油井昌由樹

監督: 黒澤明