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@ Cinema Port

こころにひびく映画紹介

邦画『望郷』

■日本人共有の体験浮き彫り

軍靴の響き高鳴る昭和15年夏、鹿児島県肝属郡。代々続いた窪田商店は父・窪田国光の放蕩三昧な生活によって倒産する。国光は出奔し、盲目の妻けさは生家に戻され、残された少年・操と姉の恵子、幼い妹富恵は国光の腹違いの兄・信吾の家に、乳飲子の健次は遠い親戚に引き取られた。太平洋戦争が勃発し、信吾は戦場に赴き、操と恵子は身重な兄嫁・好子に徹底的にこき使われる。そんな矢先、健次の訃報が届く。葬儀が終り、悲しみにくれる操と恵子を待っていたのは父・国光だった。親子3人の平和な暮らしが始まったがそれも束の間、国光の借金のため恵子は金沢の芸者置屋に売られ国光と操の放浪の旅が始まる。やっとのことである女郎屋に落ち着くが、国光は糖尿病で3か月の命と診断される。そんな国光の看病を献身的に勤める芸妓トメに、操は恋心を抱く。豪快な国光は、死んだら金の入れ歯を役立てるよう言い残し死んでいく。埋葬から数カ月後、墓を掘り起こして金歯を入手した操はそれを金にかえ、母を訪ねるが、彼女は弟を冷たく追い返す。孤独感を噛みしめながらも、海や炭坑で働き次第に成長していく操。やがて彼は鹿児島に戻り、トメを訪ねて求愛するが、彼女も既に嫁ぎ先が決まっていた。操の傷心の日々を乗り越え、“ぼっけもん”になることを誓い、再び放浪の旅を続けるのだった。

戦前まで豪商として知られた名家の長男として生まれた少年が、父の事業の失敗、家族の離散や死別を経て”終戦記念日”までの生き方を描く。その放浪の姿を通し、昭和という激動のうねりに翻弄され、あがきながらも、今日を築いてきた日本人共有の体験を新たに浮き彫りにする、実話を基にした窪田操の原作(「ぼっけもん」=鹿児島地方の方言で“勇気ある者”の意)の映画化。詩情豊かな映像と音楽で真正面から”生きる”ことを問いかける。監督は「青い山脈'88」(88)の斎藤耕一。脚本は「母(1988)」の松山善三、撮影は「落陽」の山崎義弘が担当。主人公の操役には、地元・鹿児島県でのオーディションにより新人の秋月健太郎が選ばれた。

 

 

スタッフ・監督:斎藤耕一

脚本: 松山善三

原作:窪田操

企画: 季田佳丸

プロデューサー: 斉藤八重子 、 窪田博 、 矢島進

撮影 :山崎義弘

美術: 間野重雄

音楽: 小六禮次郎

歌: 小田正利

録音: 北村峰晴

照明: 加藤松作

編集: 川島章正

助監督: 寄田勝也

スチール: 畠山壽人

 

キャスト:

窪田操:秋月健太郎 

窪田国光: 田中健

窪田けさ: 竹下景子

窪田恵子: 細川直美

勝男: 小松方正

信吾: 長倉大介

好子 :可愛かずみ

トメ :喜多嶋舞