邦画『私を抱いてそしてキスして』
■エイズを題材にした日本で最初の作品。
ロック・ハドソン、フレディ・マーキュリー、キース・へリング、アンソニー・バーキンス。彼らはすべてエイズで死んだ。プロ・バスケットボールの大スター、マジック・ジョンソンに代表される、俗にキャリアと呼ばれているまだ発病していない感染者も増え続ける一方で、決定的な治療法はまだ確立されていない90年代。エイズをテーマにした映画は『ムーンリット・ナイト』や『ロングタイム・コンパニオン』など海外では数多く製作されているが、日本ではこの作品が最初のようです。
物語は、旅行代理店に勤務する主人公・会田圭子は、前の恋人から血液検査で陽性だったという電話を受ける。検査に行った圭子は、すでに自分もエイズに感染していることを知りショックを受けるが、そんなときに出会った高野晶と、自分がエイズであることを告げられないまま肉体関係を結んでしまう。恋人が感染者であることを知った晶は彼女のもとを去り、残された圭子は自分が妊娠していることに気づく…。
原作は「極道の妻たち」「イエロー・キャブ」など話題のルポルタージュを連発していた家田荘子の大宅壮・ノンフィクション賞受賞のベストセラー「私を抱いてそしてキスして―エイズ患者と過した一年の壮絶記録」をベースに田部俊行と麻生かさねと高橋洋が共同で脚色し、「おろしや国酔夢譚」の佐藤純彌がメガホンをとった。南野陽子がHIVに感染したヒロインを演じ、日本映画として初めて厚生省の推薦を受けた。南野陽子は、この役作りのために大幅な減量に挑戦するなど熱演ぶりが当時話題になり、エイズ抜きでは語れない、これからの愛の形を見事に描きあげるに成功していた。
ジャンル:ドラマ
製作国:日本
製作年:1992年
初公開日:1992年11月14日
上映時間:108分
監督: 佐藤純弥