@ Cinema Port

こころにひびく映画紹介

奇想天外なド迫力映画10

「監督」と「映画音楽」の一騎打ち!?

度肝を抜くような映画は、100%の割合で音のつくりもいい。

奇想天外な物語は「」なくして語れないと思います。

奇想天外なド迫力映画10

 

逆襲のトライアングル

┗…リューベン・オストルンド(2022年)

 

逆転のトライアングル(字幕版)

🎼監督の揺るがぬ哲学に圧倒される。

本当に頭のいい監督だと感じます。画のつくりもパキッときれいにデザインされていますし、セレブを乗せた豪華客船を舞台に、軽快な語り口で物語は始まり、その先にあるメッセージはガツンとくる、観客が居心地の悪い思いをすることを狙って描いているわけですが、決して人間の愚かさを否定しているわけではないんですね。批判的ではあるけれど、それを自覚したうえで生きていこう、というメッセージを込めたアイロニーであり、監督の視点の優しさと厳しさを感じます。

 

多くの監督であれば、感情を音楽で説明しようとするところを、オストルンド監督は環境音楽や音響効果を”音楽”のように使用しているのも面白いところです。たとえば、人間関係が動くときには風の音を入れるなど、音楽に任せようとはしない。一方で、音楽を”音響効果”のように使ったりしています。自分なりのアイロニーを伝えるにはどうすればいいか、ノウハウを熟知している監督だと思います。

 

 

聖なる鹿殺し

  キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア

┗…ヨルゴス・ランティモス(2017年)

 

🎼謎の少年がある家族にかけた

4つの悲劇が、誰もが予想できない壮絶な“ラスト"を迎える-

美しい妻と2人の子どもと郊外の豪邸で満ち足りた生活を送る心臓外科医のスティーブン。彼には家族に内緒で定期的に会って、その成長を優しく見守る少年が一人いた。それはかつて彼が担当した手術で死なせてしまった患者の息子マーティン。ある日、そんな彼をスティーブンは家に招いて家族。

 

ヨルゴス・ランティモス監督の作品も、精神的に元気でなければ観られない作品ではありますが、音楽の使い方が面白いと感じます。あえて挑発してくるような音楽ですが、そのあざとさが決して作品を飛び超えてはいかない。常に品を保っているところが素晴らしい。監督と映画音楽家が”一騎打ち”をしているような感覚もあります。

 

 

MONOS

  猿と呼ばれし者たち

┗…アレハンドロ・ランデス(2019年)

🎼映画=総合芸術を実感!サウンドにも注目を。

楽園なのか、戦場なのか――。
世間から隔離された高地で暮らす8人の兵士たち。ゲリラ組織の一員である彼らのコードネームは“モノス<猿>"。「組織」の指示のもと、人質である博士と呼ばれるアメリカ人女性(ジュリアンヌ・ニコルソン)の監視と世話を担っている。ある日、「組織」から預かった大切な乳牛を仲間の一人が誤って撃ち殺してしまったことから不穏な空気が彼らの間で漂い始める。ほどなくして「敵」からの激しい襲撃を受けた彼らはジャングル奥地に身を隠すことに。仲間の死、裏切り、人質の逃走・・・。極限の状況下、“モノス"の狂気が暴走し始める。映画=総合芸術を実感するサウンドにも注目を。

 

 

 

ファニーゲームU.S.A.

┗…ミヒャエル・ハネケ(2007年)

 

🎼観客の希望を絶つ禁断のゲーム。開始。

ハリウッド屈指の演技派達が作り出す“地獄絵図”!!

湖畔の別荘で夏のバカンスを楽しむ3人家族の前に現れた招かれざる客―。それは純白の手袋をし、純白のポロシャツに素足を晒した2人の美青年だった。隣家の遣いと称して現れた彼らは、最初は礼儀正しく振舞うが、徐々にじわじわと冷酷で残忍な本性を露わにしていく・・・。

 

「明日の朝まで君たちが生きていられるか、賭けをしないか?」

 

招かれざる客が誘う、理不尽で残虐な恐怖のゲーム・・・。想像を超える壮絶な惨劇を、あなたは最後まで正視できるか?やがて彼らが始める理不尽な“ゲーム”。何の罪もない、愛に満ちた家庭が純正暴力へと晒される。彼らにはなす術はないのだろうか。タイムリミットの朝。ゲームの覇者となり生き残ったのはいったい誰なのか・・・?! ハリウッド屈指の演技派達が作り出す“地獄絵図”!! ゲームに巻き込まれるアンを演じるのは、この作品のプロデューサーもつとめるナオミ・ワッツ。服を脱がされ、サディスティックに虐げられる美しき妻を、痛々しいまでのリアリティで演じている。その夫ジョージには『海の上のピアニスト』のティム・ロス。そして一家を恐怖のドン底に陥れる美青年に『ラストデイズ』のマイケル・ピット。ハリウッド屈指の名優達による緊迫の演技の応酬が、観る者を凍りつかせる。また、『エクソシスト』のW・フリードキン監督を「怖がらせた映画13本」の中にも選ばれている。

 

 

 

ザ・フライ

┗…デヴィッド・クローネンバーグ

🎼ホラー映画の新境地を開いた、傑作バイオ・ホラー!

物質転移装置という大発明を成し遂げたブランドル博士。だが自分の肉体を使った人体実験には、一匹のハエが紛れ込んでいた! その日を境に、彼の体には驚異の変体が起こる。やがて彼は忌まわしいハエ人間となって恋人の前に現れた……!

 

2基の離れた機械を用いて、一方からもう一方へと物質を転送させるという画期的な装置を発明した科学者のセス。しかし、自らの肉体で実験を行ったとき、装置内に入り込んでいた1匹のハエとともに転送されたことから、やがて肉体と精神に異変が起こり始める。1958年の名作ホラー映画『蝿男の恐怖』を、当時最先端のSFXを駆使してリメイクした。アカデミー賞メイクアップ賞を受賞するとともに、その後のホラー映画に多大な影響を与えた意欲的秀作だ。異形のものに執ようにこだわり続けるデヴィッド・クローネンバーグ監督の個性が、最もメジャー的に花開いた作品でもあろう。次第に蝿男と化していく主人公の苦悩と狂気を、実力演技派ジェフ・ゴールドブラムが熱演する。

 

 

 

 

❺脳に印を!

┗…ガイ・マディン(2006年)

 

🎼家族の愛、家族の呪縛

一年で『世界で一番悲しい音楽 (The Saddest Music in the World)』『臆病者はひざまずく (Cowards Bend the Knee)』という二本もの映画を撮った2003年から3年が経って、シアトルの非営利映画製作会社"The Film Company"から、地元ロケ&地元の俳優を使うなら製作費に糸目は付けないという破格のオファーがあり、マディンはこれを引き受けた。そうして完成したのが、ガイ・マディン青年を主人公とする自伝的"私"三部作の二作目である本作品だ。遂にキャリア初のサイレント映画として製作され、トロント映画祭でのプレミア上映ではオーケストラや活弁士を付けたライブ上映となり、その後のアメリカ巡業(?)でも活弁士としてクリスピン・グローバーやジョン・アシュベリーなどの有名人を呼んだらしい。通常上映ではイザベラ・ロッセリーニがナレーションを担当した版が出回っているが、マディン本人はマスターテープを紛失したそうなので、クライテリオンの倉庫から好きなソフトを持って帰る企画で"自分の映画だけど持って帰るわ"と語っている。ちなみに、『脳に烙印を!』という邦題でフィルメックスで上映されているのでそちらの邦題を採用。

 

同作は"私"三部作の第二作であり、主人公ガイ・マディンの横柄な母親が島の灯台で孤児院を経営しつつ、その若さを保つため、夫婦で子供たちに科学実験を繰り返していた。同作はサイレント映画として撮影され、2006年のトロント映画祭でライブオーケストラや活弁士を付けてプレミア上映された。北米では同様の興行形態で巡業し、活弁士としてクリスピン・グローバーやジョン・アシュベリーなど有名人を呼ぶこともあった。その他の通常上映では、ナレーションとしてイザベラ・ロッセリーニが声を吹き込んだバージョンが上映されている。また同じ年、サンフランシスコ映画祭とマニトバ・アート・カウンシルからそれぞれ生涯功労賞を受賞している。

 

 

 

ネオン・デーモン

┗…ニコラス・ウィンディング・レフン(2016年)

 

🎼ファッション業界版『ブラックスワン』!

美しさへ執着する女たちの欲望がうずまく狂気と官能のサスペンススリラー!

誰もが目を奪われる特別な美しさに恵まれた16歳のジェシーは、トップモデルになる夢を叶えるために、田舎町からロスへとやって来る。すぐに一流デザイナーやカメラマンの心をとらえチャンスをつかむジェシーを、ライバルたちが異常な嫉妬で引きずりおろそうとする。やがて、ジェシーの中に眠る激しい野心もまた、永遠の美のためなら悪魔に魂も売り渡すファッション界の邪悪な毒に染まっていく―

 

 

スキャナーズ

┗…デヴィッド・クローネンバーグ(1981年)

 

🎼走査(スキャン)開始!彼ら(スキャナーズ)は思考するだけで人間を破壊する。
デヴィッド・クローネンバーグの初期代表作

他人の心を読んだり意思の力で他人に苦痛を与えることの出来る超能力を持つベイルは、社会に順応できず浮浪者のような生活を送っていた。ある日レストランで、彼を軽蔑した老婦人に発作を起こさせたベイルは、取り押さえられ、気づくとポール・ルース博士の研究施設に収容されていた。そこで彼は、自分が母親の胎内にいるときに母親に投薬された新薬の影響で超能力を身につけた“スキャナー”であることを知らされる。一方ベイルの兄で最強のスキャナーであるレボックは、対立するスキャナーを皆殺しにし、世界を支配する力を得ようと企んでいた。ベイルとレボック、相容れない兄弟による想像を絶するスキャナー戦が始まろうとしていた…。

 

鬼才デヴィッド・クローネンバーグ監督が「スキャナー」と呼ばれる超能力者たちの戦いを描いたSFスリラー。クローネンバーグの出世作となり、中でもディック・スミスによる特殊メイク、そしてストーリー序盤の頭部破裂シーンと終盤の対決シーンは観る者に衝撃を与え、多方面に影響を与えた。狂気に満ちた超能力者レヴォック役を演じたマイケル・アイアンサイドは本作が当たり役となった。音楽のハワード・ショアは本作以降ほぼ全てのクローネンバーグ作品を担当する事となる。


 

❾マッドマックス 怒りのデス・ロード

┗…ジョージ・ミラー(2015年)

🎼アドレナリン全開のノンストップ・カーバトル! !

石油も、そして水も尽きかけた世界。主人公は、愛する家族を奪われ、本能だけで生きながらえている元・警官マックス。資源を独占し、恐怖と暴力で民衆を支配するジョーの軍団に捕われたマックスは、反逆を企てるジョーの右腕フュリオサ、配下の全身白塗りの男ニュークスと共に、ジョーに捕われた美女たちを引き連れ、自由への逃走を開始する。

 

伝説的映画「マッドマックス」シリーズの創始者であるジョージ・ミラー監督が“ロード・ウォリアー"の世界に帰ってきた。壮絶な過去を引きずりつつ、荒廃した世界をさすらうマックス・ロカタンスキー(トム・ハーディ)は、大隊長フュリオサ(シャーリーズ・セロン)率いる集団と出会い、「緑の土地」を目指す逃避行に加わる。振り返れば大勢の手下を従えて反逆者を猛追する敵の首領の姿が。今ここに、爆音轟くカーバトルが勃発する!

 

 

 

❿最後にして最初の人類

┗…ヨハン・ヨハンソン(2020年)

 

🎼20億年に及ぶ人類の未来史を神話的想像力で描く。

天才作曲家ヨハン・ヨハンソンが人類に託した最後のメッセージ。全編16mmフィルム撮影された旧ユーゴスラビアに点在する巨大な戦争記念碑スポメニックの美しい映像とヨハンソンが奏でるサウンドが、観客を時空を超えた時間旅行へと誘う。SF小説の金字塔「最後にして最初の人類」原作。

 

数度の大戦争を経験した人類は、24世紀、ついに世界国家を実現、高度な科学文明を築くが、核エネルギーの暴発が地球のほぼ全域を焦土と化してしまう。わずかに生き残り、世界再建を果たした人類を襲う火星人の侵略、生物兵器に端を発した疫病の蔓延。度重なる災禍によって肉体的、精神的に退行した人類は、しかし再び進化の階梯を登り始め、地球を脱出して金星や海王星に移住を開始する…。20億年に及ぶ人類の未来史を驚異の神話的想像力で描いて、アーサー・C.クラークらに決定的な影響を与えた伝説的名作。